大動脈解離
Disease
大動脈解離とは
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大動脈解離は、心臓から送り出される血液を全身に運ぶ大動脈の血管壁が裂ける病気です。この状態は通常前兆がなく、突然発生します。
大動脈解離が発生すると、胸や背中などに激しい刺すような痛みが生じます。
大動脈の血管壁は、内膜、中膜、外膜の三層に分かれており、内膜が裂けるとその裂け目から血液が中膜に流れ込みます。
この流れ込んだ血液が本来の血液が通るべき場所を真腔と呼ばれ、内膜と中膜の間を偽腔と呼ばれます。
偽腔の外側は外膜一枚のみであり、流れ込んだ血液の圧力に耐え切れず、外膜が破れて血管外に出血する危険性があります。
大動脈解離の原因
大動脈解離の原因は、主に生活習慣に起因する要因と遺伝的な要因が挙げられます。
動脈硬化、高血圧、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、ストレスなどの生活習慣が引き金となることがあります。また、マルファン症候群といった全身の結合組織が脆い遺伝性疾患も原因の一つです。
特に高血圧は大動脈解離の重要な危険因子であり、大動脈の直径が通常2~3cmほどで、弾力性のある血管ですが、様々な原因により血管が脆くなり、血圧に抵抗できなくなります。これが大動脈瘤や大動脈解離を引き起こす要因となります。
発症のピークは60歳代から始まり、70~80歳代にかけて最も多く見られます。男性は女性の2~3倍ほど多くみられます。
若年層に全くみられないわけではありませんので、若い方でも血圧は常に意識が必要です。
大動脈解離の症状
大動脈解離は通常、前兆なく突如として胸や背中に激しい痛みを伴って発症します。
病状が進むにつれて、痛みは胸から腹部、そして脚へと下降する傾向があり、突如として意識消失状態やショック状態に陥ることもあります。
解離が発生した場所や病状の進行により、大動脈弁閉鎖不全や脳虚血症状(意識消失、麻痺)、腸管虚血症状(腹痛、下血)、腎不全、下肢虚血症状などの合併症が発生する可能性があります。
解離腔または偽腔と呼ばれる新たな血液の通り道から、外膜が薄くなり染み出したり破裂すると、血胸が発生します。重要な臓器への分枝血管にまで裂け目が進展すると、各臓器が虚血壊死を起こし、最終的には死に至る可能性があります。
胸や背中に急激な痛みが生じた場合は、速やかに救急車を呼び、医療機関で治療を受けるべきです。
大動脈解離の可能性を考慮し、症状が軽微でも救急救命士や医師に詳細に伝えることが重要です。
患者本人が情報を提供することが難しい場合には、家族が関連情報を詳しく伝えるよう心がけてください。
予防と対策
毎日の生活習慣改善は大動脈解離の予防に役立ちます。
動脈硬化を進行させないためには、血圧、血糖、脂質などの管理が重要です。バランスのとれた食事、適度な運動、良質な睡眠、そして禁煙は有益な影響を与えます。ストレスはなるべく避け、心身の健康を維持しましょう。
大動脈解離を経験した方は、既に血管が脆い可能性があるため、かかりつけ医の指示に従って血圧を管理することと、再発を防ぐためにも定期的なフォローが必要です。
また、健康診断を受診して定期的に体の状態を確認することは、重大な病気を予防するために役立ちます。自身の健康状態を把握し、予防策を積極的に取り入れることが命の安全を守る一環となります。