睡眠時無呼吸症候群の原因

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  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる、あるいは浅くなる疾患で、健康や生活の質に深刻な影響を及ぼします。
    その原因は単一ではなく、身体的な要因・生活習慣・加齢・基礎疾患などが複雑に絡み合って発症します。ここではSASの主な発症メカニズムと、それに影響を与える要因について詳しく解説します。

  • 気道の構造による影響

  • SASの大部分を占める「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」では、睡眠中に上気道(鼻や喉の空気の通り道)が塞がれることが直接の原因となります。
    特に、下あごが小さい、舌が大きい、扁桃腺やアデノイドの肥大、首が太いなど、気道を物理的に狭めるような体の特徴を持つ方は、気道の閉塞が起こりやすいとされています。
    また、日本人は欧米人に比べて顎が小さく、骨格的に気道が狭い傾向があるため、体重がそれほど重くなくても発症するケースが珍しくありません。骨格的要因は先天的なものも多く、家族内で似た傾向が見られることもあります。

  • 肥満による気道の圧迫

  • 体重の増加、とくに首や喉まわりの脂肪沈着は、気道の断面を狭くし、空気の通り道を圧迫します。
    その結果、睡眠中の筋肉の緩みによって気道がさらに閉じやすくなり、無呼吸が生じます。
    特に、BMI(体格指数)25以上の方ではSASの有病率が大幅に高くなるというデータがあります。
    肥満は単に気道を物理的に圧迫するだけでなく、呼吸調整に関与する神経系の働きにも影響を与えるため、全身的なリスク因子といえます。中等度以上の肥満がある場合、減量により症状の大幅な改善が期待できるのもこのためです。

  • 筋肉の緩みと加齢の影響

  • 睡眠中は全身の筋肉が弛緩しますが、加齢とともに喉の周囲の筋肉や神経の反応が低下しやすくなります。
    このため、中高年以降では気道を支える筋力が弱まり、気道の閉塞が起こりやすくなる傾向があります。
    また、女性は閉経後にSASのリスクが増加するとされています。これは、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が気道周囲の筋緊張を保つ働きを持っているためで、ホルモンの減少によって無呼吸が現れやすくなると考えられています。

  • アルコールや睡眠薬の影響

  • 就寝前のアルコール摂取や一部の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)は、喉周囲の筋肉の緊張を緩める作用があり、無呼吸のリスクを高めます。
    特に飲酒は、無呼吸そのものを悪化させるだけでなく、低酸素状態が長引く傾向を助長します。
    また、睡眠薬の種類によっては自然な覚醒反応を鈍らせてしまうため、無呼吸が起きても脳が呼吸再開の指令を出しにくくなる場合もあります。これにより、自覚しにくいまま病状が進行しているケースも少なくありません。

  • 鼻づまり・アレルギーなどの鼻腔通気障害

  • 慢性的な鼻炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔の湾曲(鼻中隔弯曲症)などによって鼻の通りが悪くなると、口呼吸が増え、気道が狭くなりやすくなります。
    さらに、口呼吸では舌が喉の奥に落ち込みやすく、閉塞性無呼吸のリスクが増加します。
    鼻づまりがある方は、鼻腔を通しての呼吸を妨げられるため、CPAP治療の効果も十分に発揮されにくくなることがあります。必要に応じて耳鼻科的な治療を併用することが重要です。

  • 中枢性の原因

  • SASには「中枢性睡眠時無呼吸(CSA)」と呼ばれるタイプもあり、この場合は気道が塞がっているわけではなく、脳から呼吸指令がうまく出なくなることが原因です。
    心不全や脳血管疾患の既往、脳幹の障害、特定の薬剤の影響などが関与していることが多く、閉塞型と比べて対処が難しい傾向にあります。
    また、閉塞型と中枢型が混在する「複雑性睡眠時無呼吸(complex SAS)」も存在し、治療には精密な検査と専門的な対応が必要です。当クリニックでは、こうしたケースに対応するASV療法も導入しています。

    睡眠時無呼吸症候群の原因は多岐にわたり、患者さん一人ひとりで背景が異なります。
    「太っていないから関係ない」と考えている方でも、骨格や筋力の低下、鼻づまり、ホルモン変化などが引き金となり、見落とされることも少なくありません。
    当クリニックでは、検査結果や身体的特徴を踏まえ、個々の原因に応じた最適な治療と生活指導を行っています。いびきや日中の強い眠気が気になる方は、早めの受診をおすすめします。