日中の眠気と睡眠時無呼吸症候群の関連性
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日中の眠気と睡眠時無呼吸症候群の関連性
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「しっかり眠ったはずなのに、日中に強い眠気がある」
「午前中からぼんやりしてしまい、集中力が続かない」
こうした症状の背景には、睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)が関わっている可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が繰り返し止まる病気で、日本では中高年男性を中心に多くの方が罹患しているといわれています。しかし自覚が乏しいため、放置されやすい病気でもあります。この病気の大きな特徴のひとつが「日中の強い眠気」です。ここでは、その仕組みや生活への影響、受診の目安について詳しくご紹介します。
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睡眠の質が低下する仕組み
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睡眠時無呼吸症候群では、一晩の間に何十回、時には数百回も呼吸が止まったり弱くなったりします。
そのたびに脳は「呼吸を再開させるために覚醒反応」を起こします。本人は目が覚めた自覚がなくても、脳波的には眠りが浅く分断されているのです。人間の睡眠は、深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠を周期的に繰り返すことで脳と身体を回復させます。
しかし無呼吸によりこのサイクルが乱れると、質の高い睡眠が確保できなくなります。結果として「7時間眠った」と思っていても、実際には断片的で浅い眠りにとどまってしまうのです。なぜ日中に眠くなるのか
睡眠の質が落ちると、脳は十分な休息を得られず、翌日には眠気として表れます。
さらに無呼吸による低酸素状態が繰り返されることで、脳の働きが鈍くなり、注意力や記憶力も低下します。
つまり日中の眠気は「夜間の睡眠の質が極端に悪化しているサイン」なのです。
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日中の眠気がもたらす生活への影響
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睡眠時無呼吸症候群による眠気は、生活のあらゆる場面に悪影響を与えます。
- 仕事や学業での集中力低下、作業効率の悪化
- 会議や授業中に意識せず居眠りしてしまう
- 読書やテレビ視聴中に気づいたら寝ている
- 家事や育児の途中で強い眠気に襲われる
- 家族から「ぼんやりしている」と指摘される
こうした症状が続くと、仕事の成果や学習効果にも直結します。また本人だけでなく、家族や周囲にも負担を与えることになります。
なぜ日中に眠くなるのか
日中の眠気は不便な症状の一つにすぎませんが、その背景には深刻な身体への負担が隠れています。
呼吸が止まるたびに体内の酸素濃度が低下し、交感神経が刺激されることで血圧が上昇します。これが毎晩繰り返されることで、次のような病気のリスクが高まることが知られています。- 高血圧
- 動脈硬化
- 心筋梗塞や狭心症
- 不整脈
- 脳卒中
- 糖尿病の悪化
つまり「眠気を我慢すればよい」という問題ではなく、心臓や脳の病気の引き金となる可能性があるのです。
睡眠不足との違い
日中の眠気は単なる睡眠不足でも起こります。しかし睡眠時無呼吸症候群の場合、睡眠時間を十分に確保しても改善しない点が特徴です。
「毎日7時間眠っているのに眠い」「休日にいくら寝ても疲れがとれない」という場合は、単なる生活リズムの問題ではなく病気が関わっている可能性が高いといえます。
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治療による改善
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睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、一般的にはCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)が行われます。これは睡眠中にマスクを装着し、気道に空気を送り込むことで無呼吸を防ぐ治療です。治療を継続することで、夜間の睡眠が安定し、日中の強い眠気が改善されることが多く報告されています。
実際に治療を受けた患者さんからは「午前中から頭がすっきりしている」「仕事の集中力が戻った」「休日に長時間寝なくても元気に過ごせる」といった変化がよく聞かれます。眠気の改善は生活の質を高め、同時に心血管疾患のリスク低下にもつながるため、早期の治療開始が重要です。
受診を検討すべきサイン
次のような症状がある方は、検査をおすすめします。
- 日中の眠気が慢性的に続いている
- 朝起きても疲れや頭痛が残る
- 家族からいびきや呼吸の停止を指摘されている
- 夜中に何度も目が覚める、トイレが近い
- 集中力や記憶力の低下を自覚している
こうした症状は「年齢のせい」「生活習慣のせい」と思い込みやすいですが、実際には睡眠時無呼吸症候群が隠れているケースも少なくありません。