睡眠時無呼吸症候群の治療
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睡眠時無呼吸症候群の治療
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、放置すると高血圧、不整脈、心不全、脳卒中などの重大な疾患のリスクを高めます。
しかし、適切な治療により、睡眠の質が改善されるだけでなく、こうした合併症の予防にもつながります。
当クリニックでは、専門的知見をもとに、一人ひとりに最適な治療法を提案しています。
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睡眠時無呼吸症候群は治るのか?
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睡眠時無呼吸症候群の治療は「根治」ではなく、主に以下の目的があります。
- 睡眠中の無呼吸や低呼吸を減らす
- 日中の眠気や倦怠感を改善する
- 高血圧、心疾患、脳卒中など合併症リスクを下げる
- 交通事故や仕事中の集中力低下を防ぐ
つまり、「治す」のではなく コントロールして生活の質と安全性を確保する ことが主眼です。
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CPAP療法
(シーパップ) -
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠中に気道が塞がる「閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)」に対して最も広く用いられている治療法です。
専用のマスクを鼻または鼻・口に装着し、一定の空気圧をかけることで、気道を開いた状態に保ちます。
これにより、無呼吸・低呼吸の発生を抑制し、いびきや日中の強い眠気を改善します。CPAP療法の特徴
- 重症〜中等症の患者に高い効果
- 使用当日から改善を実感される方も多く、集中力・作業効率の向上が期待できます
- 高血圧や心血管疾患のリスク軽減効果も報告されています
- 小型・静音の機器で自宅使用もスムーズで、旅行用のコンパクトモデルもあります
当クリニックでの対応について
CPAPやASVの導入にあたっては、初回診察時にマスクの装着テストや使用方法の説明を丁寧に行い、患者さんが安心して治療を始められるようサポートしています。
導入後も、使用中のデータをもとに圧力の最適化や機器の使用状況を確認し、定期的なフォローアップを行っています。
なお、これらの治療は保険診療として対応可能ですが、適用には一定の要件があります。詳細は診察時にご案内いたします。
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ASV
(アダプティブ・サーボ・ベンチレーション) -
慢性心不全の患者に対してはASVを行っております
すでに慢性心不全を有している症例に対しては、ASV(アダプティブ・サーボ・ベンチレーション)という新しい陽圧換気療法の導入を行っております。
慢性心不全患者さんの睡眠障害は、多くの場合、上気道の閉塞によって無呼吸となる従来の閉塞性睡眠時無呼吸の他に、中枢性に無呼吸と過呼吸を繰り返す中枢型睡眠時無呼吸(チェーンストークス呼吸)が混在しております。
したがって、従来のCPAP治療を行っても約50%の症例において改善しないことがあり、このような場合は生命予後が悪いとされてきました。
しかし、近年に開発されたASVを使用すれば、そのような症例に対しても、呼吸状態と気流変化に適応して補助換気圧を同調させることができるため、中枢型睡眠時無呼吸の改善を図ることができ、睡眠障害の改善を図ることができるようになりました。
当院では、CPAP治療の導入の際には肺機能に加え心機能のチェックを行い、より適切な酸素治療を提供いたしております。CPAP療法の特徴
- 呼吸パターンをリアルタイムでモニターし、必要なタイミング・圧力で空気を送る高度な自動制御機能
- 心不全や脳卒中後の患者さんなど、特殊な病態に対しても安全に対応
- 通常のCPAPで十分な効果が得られない方の「セカンドライン治療」としても有用
対象となるケース
- 睡眠検査で中枢性無呼吸が確認された方
- CPAP使用中に無呼吸が残存する方(複雑性SAS)
- 心不全などの循環器疾患を併発している方
※ASV療法の適応や保険適用には一定の基準があります。詳細は医師が診断のうえご説明いたします。
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パルスサーミア
(レーザー治療) -
「パルスサーミア」は、切らない・痛みが少ない・ダウンタイムがほとんどない いびき・睡眠時無呼吸症候群の最新レーザー治療です。
従来の手術や装置による治療では、痛みや腫れ、入院や休養期間が必要になることが多く、日常生活に支障をきたすケースもありました。しかしパルスサーミアでは、これらのデメリットを大幅に軽減し、より快適に治療を受けられるようになっています。パルスサーミアのメリット
- いびきや軽度~中等度の睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できる
- 従来治療で問題となっていた痛みやダウンタイムを大幅に軽減
- 日常生活に支障なく治療が受けられるため、仕事や家庭生活との両立が可能
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生活習慣の改善
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、治療機器による対症療法に加えて、日常生活の見直しによって症状を軽減したり、進行を防いだりすることが可能です。
特に軽症の場合は、生活習慣の改善だけで症状が大きく改善することもあります。
ここでは、SASの悪化因子とされる生活習慣と、その改善方法についてご紹介します。1. 体重管理(減量)
肥満はSASの最大のリスク因子です。特に首周囲の脂肪が上気道を圧迫し、無呼吸を引き起こしやすくなります。
BMIが高い方や、短期間で体重が増加した方は、減量によって気道が広がり、無呼吸の回数が減少することが多く報告されています。改善には、無理のないカロリーコントロールを心がけることが大切です。極端な食事制限はリバウンドや体調不良を招く恐れがあるため避けましょう。また、ウォーキングや軽めの有酸素運動を日常的に取り入れることも効果的です。さらに、間食や夜食を控えることで、1日の摂取カロリーを自然に抑えることができます。
2. アルコールの摂取を控える
就寝前の飲酒は、気道の筋肉をゆるめてしまい、無呼吸やいびきの原因になります。
特に寝る前のアルコールは、気道の閉塞を助長し、CPAPの効果も低下させる可能性があります。改善のポイント
- 寝る3時間以内の飲酒を避ける
- 飲む量や頻度を見直す
- 週に数日は休肝日を設ける
3. 禁煙の推奨
喫煙は上気道の炎症や浮腫を引き起こし、気道を狭くする原因になります。
また、咳や喉の不快感により睡眠の質を低下させることもあります。改善のポイント
- 禁煙外来など専門のサポートを活用
- 家族や周囲の協力を得る
- 代替手段(ガム・パッチ)を上手に使う
4. 就寝時の姿勢を見直す
仰向けで寝ると舌根が落ち込み、気道が塞がれやすくなります。
一方、横向き寝は気道が確保されやすく、いびきや無呼吸の頻度が軽減される傾向があります。改善のポイント
- 抱き枕や背中にクッションを入れて横向き姿勢をキープ
- 睡眠用の体位保持グッズを活用
- 高すぎない枕を選ぶ(首の角度を自然に保つ)
5. 睡眠リズムと生活習慣の整備
不規則な生活は自律神経の乱れを招き、SASの悪化要因になります。
また、睡眠不足が続くと、より深い睡眠中に無呼吸が長引く傾向もあります。改善のポイント
- 決まった時間に寝起きする(休日も含め)
- 日中に光を浴びて体内時計を整える
- 就寝前のスマホ・テレビは控え、リラックスできる環境をつくる
生活習慣の改善は、治療の効果を高め、将来的な健康リスクを減らす上でも重要です。
当クリニックでは、機器による治療に加えて、患者さんの生活習慣や体質に応じたアドバイスも行っています。
「痩せたら楽になった」「お酒を控えたらCPAPが楽になった」
そういった実感を得ていただけるよう、医師・スタッフがサポートします。
無理のない範囲で、少しずつ生活を見直してみましょう。